文書管理を電子化する動きは、近年ますます加速しています。背景の1つ目はテレワークや在宅勤務の従業員が一気に増え、押印や文書を確認するためだけに出社する非効率な体制を見直す企業が多くなっているからです。文書を電子化すれば、インターネットを通じて場所や時間を選ばずに文書を確認することが可能です。2つ目の背景として、2022年1月に施工された電子帳簿保存法の改正があります。国税関係帳簿・書類のデータ保存について大きく要件が緩和されたため、多くの企業が文書のデジタル化を進めようとしています。では、文書管理を電子化すると会社にとってどのような利点があるのでしょうか?本記事では、文書管理を電子化する際の注意点やメリット・デメリットについて解説します。
文書管理の電子化とは?
まずは前提から確認しておきましょう。
文書は通常、「作成・活用・保管・廃棄」の4つの状態があり、それぞれの状態で適切に管理する必要があります。
・作成した文書
→ファイリングして棚などへ保管する
・活用する文書
→いつでも活用できるよう、どこに何があるのかを明確にする
・保管している文章
→活用頻度が低くなったものは倉庫などへ移動する
・廃棄する文書
→3年~10年など保管期限が過ぎた文書を廃棄する
今までは紙での文書管理が一般的でしたが、近年は政府が主導となってDXや働き方改革を進めています。そこで業務体制の見直しの一環として文書管理の電子化に取り組む企業が多くなっているのです。文書の電子化は、紙の文書に対しスキャナなどを使用し、電子データとして保存していきます。では、文書を電子化すると運用・管理面でどのような利点や課題があるのでしょうか?
文書管理の電子化【良いコト】
文書管理の電子化と聞いて一番に思い浮かぶのが、’紙がいらなくなる’というメリットでしょう。もちろん紙で保存しなければならない文書もありますが、多くの社員が日々使用・活用する文書を電子化すると大きなメリットが得られます。紙の状態で文書を管理すると、次のようなコストがかかります。
【紙保存時のコスト】
・用紙代、インク代
・プリンターの維持費
・文書を保存するためのファイル、棚
・文書を保管するためのスペース
また、文書が発生するたびにファイリングし、改訂のたびに差し替えする作業は時間がかかり、ファイリング漏れや紛失のリスクもあります。原本の持ち出し管理の必要や、紙が汚れてしまう心配もあるでしょう。しかし文書管理を電子化すると、これらの手間やコスト、リスクを抑えることができるのです。
電子化すれば、キーワードから必要な文書をすぐに検索することができます。何百枚もの紙が綴じられたファイルから、時間をかけて目的の文書を探す必要はありません。また電子化の大きなメリットとして、文書が共有しやすいことが挙げられます。会社に複数の拠点がある場合、その都度各拠点に社内便やFAXで文書を受け渡ししている企業も多いでしょう。しかしインターネット環境があれば、いつでもどこでも文書を確認できて、在宅勤務やサテライトオフィスで仕事をするといった働き方も可能になるのです。近頃は環境面に配慮する姿勢も企業に求められてきており、文書を電子化して管理していく動きは止まらないでしょう。
文書管理の電子化【悪いコト】
しかしながら、文書管理を電子化するとデメリットもあります。電子化する文書が多ければ新たにサーバーを用意する必要があり、文書を見るためにはパソコンやタブレット機器も用意しなければならず、新規購入の場合にはコストがかかります。また電子化されたファイルは簡単にコピーや改訂ができます。よってファイルの運用ルールをあらかじめ決めておかないと、ミス・混乱の元となり、かえって使いにくいものになってしまいます。セキュリティ面での懸念もあるため、リスクマネジメントの教育も必要です。今までと業務のやり方が変わるため、慣れたやり方から切り替えて新しい業務を覚えるのに、一時的に現場の負担は増えます。電子化に踏み切る前に、事前に運用ルールを十分に設計しておくことが重要となります。
電子化の手順とスキャナ使用時の注意点
文書の電子化の際に一番初めにやる作業は、不要な文書を捨て、’電子化する文書’と’電子化しない文書’を決める作業です。存在するすべての文書を電子化するとコストが膨大になりますし、一度も使わない文書を電子化してしまうことにもなりかねません。活用頻度が高い文書やリモートで見たい文書など、まずは電子化する文書を絞る作業から始めてみましょう。また実際にスキャナで文書を電子化する際にも、事前にデータの保管方法についても次のような内容を決めておく必要があります。
・文書のサイズ
→すべて同じ大きさにするのか、実寸で取り込むのか
・解像度
→解像度が高いとファイルサイズも大きくなる
・ファイル形式
→PDF、jpg、pngなど
・ファイル名、フォルダ構造
→検索しやすいようルールを決める
・属性情報
→’品番’や’お客様名’など、検索しやすいようにどんな情報を入力するか
・OCR処理
→画像データを抽出してテキストデータにするか
これらのルールを決め、実際にスキャンを実行していきます。スキャナを使用する際にも、ホチキスやクリップを外し、文書を種類ごとに分類しておくと、スムーズに取り込むことができます。
まとめ
文書管理を電子化すると、これまで紙で行っていた情報の伝達・活用・管理がしやすくなります。管理スペースが削減され、検索性が向上して時間の節約になるため、業務をより効率化することができます。電子化した後の運用ルールを決めておく必要はあります。しかし、文書管理の電子化には多くのメリットがあるのがお分かりいただけたのではないでしょうか。
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