システム・ツールブログ

技術文書管理でPDMの導入効果を上げる方法とは?

製品設計は2Dから3Dへシフトしています。この理由は形状設計だけでなくBOM作成や強度計算の解析など品質向上に寄与できるメリットなどがあるからです。
図面やBOM等の技術文書の管理でPDMのニーズが増えていますが、PDMをどう活用すれば効果が出るのかご紹介します。

技術文書管理とは?

企業の中には色々な文書が存在します。
日頃から皆様が目に触れる文書として、例えば契約関係の文書では「売買契約書」「請負契約書」「秘密保持契約書」があります。売買関係の文書では「見積書」「注文書」「注文請書」「納品書」「請求書」があります。企業は業務のやり取りを文書で記録しながら運用・管理を行なっているのです。

製造業では、「技術文書」に企業のノウハウが集まっています。技術文書がなくては、ものづくりができないほどの重要な情報と言えます。
製造業の「技術文書」は、代表的なものとして「指示書」「仕様書」「図面」「部品表(BOM)」「品質管理」などの文書があり、以下のような特徴があります。

指示書

製造業は「営業や企画部門」が依頼した内容をもとに「開発・設計部門」がものづくりに必要な図面の情報を作成します。そして「製造部門」が実際にものづくりを行い、製品が出荷されます。これら各部門の情報を正確に伝えるために、指示書を作成し情報伝達を行うのです。
指示書の種類は部門によってさまざまで、営業で作成する「手配書」、設計情報を伝える「設計通知書」などがあります。また生産技術部門が製造部門に対して発行する「作業基準書」「作業指示書」「QC工程表」、製造部門が記録する「作業チェックリスト」などもあります。

仕様書・図面

製品の形状を図形と寸法で表現したものが図面です。製品に関する仕様は仕様書として作成し、両方揃う事で誰がみても製品が製造できるように取りまとめています。
仕様書は、製品の仕様を取りまとめた製品仕様書以外に、製品規格書、梱包仕様書など製品によってさまざまなパターンが存在します。

部品表

製品は部品を組み合わせることで完成品が出来上がります。
部品の構成を表にしたものを部品表といい、部品表をツリー形式で現したものを部品の構成情報と言います。

品質管理

設計時に作成された製品規格、図面、製品仕様書以外に、製品を一定レベルの品質で出荷するための検査基準書、検査チェックリストにより品質基準を設けています。
近年の製造業ではISO9001の資格を持っている企業が大半を占めます。ISO9001は良い製品やサービスを提供することを目的とした品質に関する国際規格です。各企業は国際基準レベルの品質管理で提供している製品の証として取引に活かし、お客さまからの信頼を得ています。

PDMシステムとは?

PDMは「Product Data Management」の頭文字を取った略語です。PDMシステムのことを「製品情報管理システム」と言い、製造する製品に係る情報を管理するためのシステムです。
製品を製造するためには図面は必須であり、代表的な図面として「部品図」と「組立図」があります。

部品図は、部品の「形状」「材質」「大きさ」を絵で表現しています。
組立図は、部品をどのように組み立てるのかの情報と、それぞれの部品が何個必要なのかを一覧表にした部品表で構成されています。部品表は「Bills of materials」の頭文字をとってBOMと呼ばれています。

3D設計では、3DCAD内のバーチャル空間上で、実際の部品形状を3Dモデルとして作成します。各部品をどのように組み立てるか、データを作成していくのです。
現在では、3Dモデルから「部品図」「組立図」は自動生成する技術が確立しています。組立情報からBOMも自動作成することが可能です。

製品設計では、設計時に何度も繰り返し行われるデザインレビューによって技術文書は何度も修正する作業が発生します。これまでの2D設計では全ての図面を修正する作業が大変でしたが、3D設計では部品の形状を修正するだけで、図面・BOM全体に対し、一度に修正できます。このような設計業務の効率化、修正ミスの漏れをなくす点などのメリットから、2D設計→3D設計へシフトしているのです。

PDMシステムとBOMの関係性

PDMシステムは3DCADのデータ管理を目的として開発されたシステムです。
3DCADデータは部品(パーツ情報)と組立(アセンブリ)情報、3Dモデルから作成された2D図面の3つの要素で構成されています。1つの製品を開発するまでには長い時間を要するケースもありますが、その変更履歴を全て管理することが可能です。
近年では3DCADで描ける形は、実際に製造可能と言われています。つまり3DCADの性能により製品の出来が左右されると言われているのです。各CADメーカーは他社のCADとの差別化でしのぎを削っており、各社のCADフォーマットは他社には公開されていないのが一般的です。

このような背景から3DCADのデータを管理するPDMシステムは、同一メーカーでないと開発できないため、CAD毎にPDMシステムが存在しています。
PDMは部品の組立情報から構成情報を作成できます。この構成情報は、2D図面を作成する際にBOM(部品表)として合わせて出力することが可能です。
ちなみに設計が作成するBOMをE-BOM(設計部品表)と言います。E-BOMを基本情報として、生産部門ではP-BOM(購買部品表)やM-BOM(製造部品表)に加工され利用されるのが一般的です。
P-BOMやM-BOMは生産管理システムの基本情報になります。これらのBOM情報をベースに製造部門は生産工程や購買、原価管理を行います。

PDMの導入効果を上げる方法とは?

製造業が製造する製品は、大きく「量産系」と「受注生産系」に分けることができます。
「量産系」は、1つの製品を複数のラインナップとして大量に製造しているもので、自動車や家電製品などが有名です。
「受注生産系」は、お客さまのニーズから一品一品をオーダーメイドで製造するもので、大量生産に利用するための金型などがあります。

PDMシステムを利用する3D設計は、3Dモデルの作成に時間を要します。しかし時間を掛けてでも、その後の変更作業やモデルチェンジによるデータ流用ができる量産系に向くシステムなのです。一品ごとオーダーメイドで製造する企業ではコストが掛かり、PDMシステムが本来持つメリットを十分生かせません。

また、PDMシステムはライセンスが高額で、例えば、1ユーザで20〜30万円×設計者が100名いる企業では基本ライセンスだけで3,000万円が必要になるケースがあります。そして業務効率化のためにカスタマイズを行うと導入コストだけで1億円を超えるケースもあります。ある程度の企業規模がないとPDMシステムの導入すら難しいのが現状ではないでしょうか。

2D設計ではJIS規格の部品や、他社メーカーの部品図を作成することは不要です。しかし3D設計では全てを3Dモデルで表現するため、共通部品も3Dモデルのデータが必要になります。共通部品の利用箇所や共通部品の影響範囲を理解せず設計変更を行うと、変更してはいけない製品の形が勝手に変更され、製造ミスの要因となります。

PDMシステムを導入する前に最も重要なポイントが「3D設計の標準化」なのです。3D設計の作成・変更ルール、採番ルールをしっかりと標準化してからPDMを導入するべきです。しかしシステムありきで導入してしまい、システムに任せれば設計効率が上がると勘違いしているケースがあります。コストばかりが掛かってしまい、導入効果が出ない‘金食い虫’になっている企業も多いのではないでしょうか?

まとめ

製造業では「ものづくり」が根幹であり、製品を生産するために生産管理システムを利用している企業が大半ではないしょうか。生産管理システムの運用では、受注から在庫管理、工程管理などの運用ルールをしっかり定めて、利用されている企業が多いと思います。
何より生産=企業の売上に直結しており、社長や役員が生産情報を日々確認している企業もあります。

生産と違い、設計はイチからものづくりの内容を作り上げ、手法ややり方も企業によって異なります。世の中の流れは誰でもその形がわかる3D設計が当たり前になってきています。その複雑なデータ管理を支援してくれるPDMは魅力的なシステムです。
ただPDMの活用は「運用ルール」が何より重要です。運用ルールをしっかり検討して導入すればコストメリットが出る仕組みを構築できるのです。

いくら3D設計を行っても、実際のものづくりは図面でありBOMである2Dデータが基本的です。まずは2Dデータの運用をしっかり実践できてからPDMを導入する方法も‘アリ’ではないでしょうか?

当サイトでは、「D-QUICKシリーズ」についてわかりやすく説明している資料をご用意しております。安心・安全に図面・文書管理を行うためのポイントが理解できる資料になっています。
ぜひ、ダウンロードページより資料をご覧ください。

まだ情報収集レベルで、学びを優先されたい方
「図面・文書管理で困ったときのハンドブック」~製造業・完成図書・テレワーク・クラウド、すべての解決策をお見せします~

システムやクラウドサービス等の具体的な解決策を探している方
図面・文書管理システム「D-QUICKシリーズ」基本ガイドブック

より詳しい事例を知りたい方
「製造業の図面・文書管理 自治体の完成図書管理 D-QUICK導入事例集」

「システム・ツール」の関連ブログ