紙の契約書を使っているときは当たりまえのように、契約者欄に押印をしたものを双方が保管していました。では、契約書が電子データになったらどうでしょうか。電子データの契約書に対してハンコを物理的に押す事はできません。そもそも契約書に押印(印影)は必要なのでしょうか。電子データになった契約書の押印に関する運用や考え方について、「文書管理とハンコ」と中心に解説いたします。
文書管理システムとハンコ① 必要性
結論から言いますが、契約書などの書類に必ずハンコを押さなければならないという決まりはありません。契約に関する法律は民法で定められていますが、民法のどこを探しても契約書にハンコが必要という記載はありません。契約とは、当事者の申込や承認の意思表示が合致すれば成立をします。つまり、口頭で交わされた口約束でも契約は有効になります。例えば、スーパーやコンビニで商品を購入しお金を払う行為も売買契約という契約の一種になります。
しかし、現実的に金額の大きい取引において記名やハンコが無い契約書は無く、口頭だけで済む場合はほとんどありません。
ではなぜ、契約書を作成して記名・押印をするのでしょうか。その理由は後に争いが発生してしまった場合に客観的な証拠を残す意味があるからです。口頭だけでは、契約後に「言った」「言わない」といった事が起こりかねないからになります。このような背景から契約書と、契約書に対する記名・押印が重要視されています。もちろん、紙の契約書だけではなく、電子データの契約書も同じことです。
文書管理システムとハンコ② ハンコの種類
それでは、紙の契約書に押している印鑑(ハンコ)の種類についてご説明します。
1. 契約印
署名の後ろや署名に重ねて押す印鑑です。押印の場所については明確な決まりはありませんが、署名の近くに押します。署名と印鑑の位置が離れている場合に「捨印」と間違えられる場合があるので、署名に重ねて押すことがお勧めです。
2. 割印
契約書の原本と写しなどのように、契約書が複数になる場合に押します。それぞれの契約書をずらして重ね、双方の契約書にまたがるように押します。これは、2つの契約書に関連があることを示すために行われ、契約書の改竄や不正なコピーを防止する目的があります。
3. 消印
収入印紙を貼付した契約書で、印紙と契約書にまたがって押す印鑑になります。消印を押す事で収入印紙の再利用を防ぐことができます。使用する印鑑は契約書の作成者や契約当事者のうち、誰か1人の印鑑であれば問題ありません。
4. 訂正印
契約書内の文面や契約内容に間違いがあった場合、その内容を訂正、修正するために押すものです。その訂正は契約者本人が行った事を示す目的があるため、契約印と同じ印鑑を使用します。訂正印の使い方は、修正部分に二重線を引き、線の上か近くに訂正印を押して空欄に正しい内容を記載します。
なお、訂正印として小型の印鑑が販売されていますが、契約印とは異なる印鑑になるため契約書本人によるものか判断が出来なくなります。正式な契約書ではこのような訂正印を使用しないで、契約印と同じ印鑑を訂正印に使用してください。
5. 捨印
契約書の文書に間違いがあった場合に、その度に訂正印を使わずにすむよう、前もって訂正印を押しておくことを言います。捨印の欄や契約書の上部余白に契約印と同じ印鑑で押印します。捨印のある契約書は相手に一切の修正をまかせることになるので、使い方に注意が必要です。
このように紙の契約書に関するハンコは用途に応じて様々な種類があります。契約書が紙から電子データになった場合はどうなるでしょうか。次の章からご説明します。
文書管理システムとハンコ③ ハンコの利用方法
文書管理システムに契約書を登録する方法はいくつか存在しています。
1. 既に押印された契約書をスキャンして押印済の契約書をPDFファイルとして登録する方法
利用方法としては一番簡単な方法になります。但し、テレワークが増えている状況の中、紙の契約書にハンコを押すためだけに出社をする人が少なくないと思います。
2. PDFの契約書に電子印影を押印する方法
市販のソフトウェア(Acrobat Readerなど)を使って印鑑の画像を貼り付ける方法です。取引先との合意があれば、電子印影を押印する方法が可能です。テレワークをしている人も自宅で押印処理ができるので、押印の為だけに出社する手間は省けます。
但し、電子印影は便利ですが、なりすましや不正利用といった問題があります。電子印影は自由に作成が可能です。元のデータを複製してしまえば、まったく同じ電子印影を第三者が利用できてしまう可能性があります。
上記の1、2で対応をする方法もありますが、電子契約を使って対応する方法もあります。
それでは電子契約についてご説明します。電子契約になると何がどう変わるのでしょうか。
【電子契約で変わること】
1.押印:電子署名に変わる
2.印鑑証明書:電子証明書に変わる
3.契約印・割印:タイムスタンプに変わる
【電子契約のメリット】
・収入印紙を貼付する必要がなくなる
・契約締結までのリードタイムが短縮する
・契約書の保管や管理の効率化がはかれる
・テレワークでの対応が容易に実現できる
【電子契約のデメリット】
・全ての契約書に対応していない(紙の書面が義務付けられている契約)
・電子契約にすることに取引相手の承諾が必要
電子契約になると印紙が不要になり、契約締結までの時間が短縮されます。但し、取引先が合意をして双方が納得をする形で実現しなければなりません。
まとめ
「文書管理システムでハンコを押したい!どうすればいいの?」と題しまして、ご説明してまいりました。契約書に押すハンコは、法的な根拠はありません。単なる商慣習として、後々揉めないために署名と押印をして保管をしていたと言えるでしょう。そして、今までの契約書は紙で保管していたため、様々な印鑑の種類(契約印、割印、捨印、訂正印など)がありました。
テレワーク時に、契約書を締結する必要が発生したときに、契約書に押印をするために出社しているケースもあります。働き方が変わっていく中で、ペーパーレス化の実現、テレワークの実現のため、契約書の押印を変えていくことも必要です。
また、書面契約から電子契約への切替たときの「印紙代などのコスト削減」、「契約締結までのリートタイム短縮」などメリットは大きいと思います。新しい時代になりましたし、文書管理とハンコについて、社内で考え直してみてはいかがでしょうか。
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