ブログペーパーレス化規則・規定

製造業 紙の図面管理はデータ活用でDXを実現してみよう

業種に関わらず、どの企業もDXへの取り組みを始めています。DXを実現する上で紙図面や紙文書は大きな弊害となります。ただすべての紙がDXの弊害になるわけではありません。DXをうまく進めるために、紙と図面管理はどのように付き合っていけばいいのかをご紹介します。

DXとIT化は違う

DXとはみなさんご存知のとおり「Digital Transformation」の頭文字を取った略語で、直訳すると「デジタルによる変容」になります。デジタル技術を用いて、生活やビジネスが変容していくことをDXと言います。

ここでDXという言葉を何となく聞いたことがある方は、「DXってIT化のことでしょ?」とか、「要するにAIやIoTを導入することでしょ?」と思っている人もいるのではないでしょうか。

DXに関して、経済産業省ではDX推進ガイドラインを公開しています。DX推進ガイドラインには「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とDXを解釈しています。

最近では、展示会やセミナーで「DX」をキーワードとしている企業も多く、ビジネス用語としても定着しつつあります。データやデジタル技術によって、製品やサービス、ビジネスモデルを「変革」してこそDXと言えるのです。DXとIT化は違うという点を理解しておきましょう。

紙図面の全てがDX実現の問題になるわけではない

PCの普及に伴い、古くから「ペーパーレス化」というキーワードがあります。ペーパーレス化は、「DX」よりもかなり昔から取り組まれている活動のひとつです。ペーパーレス化とは紙運用に関して、デジタル技術を利用して電子運用に切り替えることです。ペーパーレス化のメリットは、紙や保管場所のコスト削減や無駄な作業を削減し、業務改善につながることです。「DX」の実現には「デジタル技術の活用」が大前提のため、紙のアナログ情報は何らかの形でデジタルデータにする必要があります。

誰もが思いつくペーパーレス化の方法は、スキャナーを利用して紙をイメージファイル(PDFファイルなど)にする方法です。ところが実はもっと簡単にペーパーレス化を行う方法があります。その方法は、そもそも紙に印刷しない、紙で資料を作成しないことです。

今、ほとんどのビジネスマンは、PCを利用して新しい資料を作成します。図面もCADを利用して新しく作成するケースが大半です。せっかく電子データで作成しているにも関わらず、紙の方がチェックしやすいからと印刷するケースはないでしょうか。また検図・承認の証拠を残す必要があるため、紙に印刷し、サインやハンコを押すケースもあるはずです。つまり紙に情報を付加する作業があり、その付加情報を残すために紙を電子化しないといけなくなるのです。

紙図面の電子化もやり方はいろいろ

紙図面の運用を電子データによる運用に見直すとき、まず紙図面がどこで利用されているか把握する必要があります。一般的に企業に存在する紙図面は以下のようになります。

企業に存在する紙図面
1)過去、図面を紙運用していた時の図面【お客様図面、社内図面】
2)図面作成後、チェック用に印刷した図面【社内図面】
3)検図・承認用に印刷した図面【社内図面】
4)関係部署向けに配布用として印刷した図面【社内図面】
5)生産部署向け・品質管理向けの図面【お客様図面、社内図面】
6)納品図面【お客様向け】

このような紙図面のうち、お客様に関わる図面は捨てることが難しい現実があるでしょう。その理由は次の通りです。

1)の紙図面が捨てられない理由

すでに製品ライフサイクルは過ぎており、参照する頻度はほぼないはずですが、過去に販売した製品でもあり、メーカー責任として捨てられません。また、製品ライフサイクルが長い製品の場合も、参照頻度は低いとしても問い合わせ時には必要になるので捨てられません。

5)の紙図面が捨てられない理由

お客様から提供された紙図面のなかでも、その都度配布される図面は保管する必要はありません。しかし一度しか配布されなく、リピートのオーダーの可能性がある図面は、ものづくりに必要なため捨てられません。

6)の紙図面が捨てられない理由

お客様へ納品した成果物と同じ物を社内に保管しているケースがあります。理由は、何か問い合わせがあれば参照する必要があるため、なかなか捨てられないのです。建設業や設備業では完成図書と言われている資料は、製品ライフサイクルが数十年に渡りますし、国からも法的に保管が義務化されています。また大量に資料があることが多く、電子化するコストが掛かりすぎるため、紙のまま保管するしかない状況になります。

このような紙図面は、簡単に廃棄すると決める訳にもいきません。ここで検索するためのインデックス情報を整備するだけでも、業務改善や活用の幅が広がることに繋がります。そのうえで、数年計画で予算を組み、優先度を決め、電子化していくことも検討されてみるのもいいかもしれません。

DX実現に向けた図面管理

気づいている方も多くいらっしゃると思いますが、前述した紙図面が発生するケースのうち、2〜4)の紙図面は、「社内図面」であり、言うなれば社内の都合で紙図面を利用しています。お客様都合や、過去の資産が紙でしか存在しない状況とは異なり、業務のやり方を変えれば、運用自体を電子運用にできます。

ここで問題になるのが、昔からのやり方を変えないマイナス思考の考え方です。例えば、検図作業は紙と決まっているから、出図配布は紙でやるというルールです。従来のやり方を見直さず、慣れ親しんだ作業をそのまま続けているケースがその代表例です。

ただ、今回のテーマであるDX実現をターゲットとした場合、一番の問題は紙からの情報を再入力する行為です。いったん紙に出図し、「追記した」「承認のハンコがある」情報を保持するため、紙図面をスキャニングしてデジタルデータにするケースはよくあります。

せっかく図面作成をデジタルのCADで行っていながら、運用フローの途中で紙にしてしまうケースがあります。デジタル情報をアナログ情報にしてしまい、大事な情報が失われるデメリットはその後のデータ活用に大きなマイナスとなります。

さらに、承認情報をシステムへ手入力して情報を付加するなど、紙にする工程が絡むとムダな作業が増えるばかりです。入力ミスで情報が異なったものになるとデータ精度が落ち、精度を保つためにさらに作業を増やすなど、悪循環になるばかりです。

これまで、DX実現には紙図面が問題と説明してきましたが、だからと言ってすべての紙図面を無くさないといけないのか?といえば違います。デジタルデータを印刷=紙=アナログ情報にせざるをえないケースは製造業では多々あります。PCが使えない製造現場(埃・油・鉄粉などが充満している劣悪環境など)で、タブレット利用をしようとしてもすぐに壊れるような場所があります。このような場合、紙はコスト面と利便性から威力(付加価値)を発揮します。

ここで考えないといけないのが、紙にしたものに対して情報を追加することです。デジタル→紙でメリットのある部分は有効に活用しても、その紙に何かを追記してしまうと、その情報はデジタル情報にはないため、何らかの方法でデジタル化(手入力、電子化など)する必要があります。

紙の利用は必要な情報を参照するまでとし、情報を追加しない運用が重要です。情報を追加する場合は、元のデジタル情報に追加し再度紙に印刷して活用してみましょう。このような利用方法であれば、DX実現に対して何ら影響を与えません。


まとめ

DXの実現には、デジタルデータの活用が大前提のため、紙図面の存在自体がNGと考えがちです。しかし紙図面は劣悪な環境でも低コストで活用できるメリットがあります。

問題は紙を使って情報を付加するケースです。例えば、紙図面に追記するのではなく、図面データの元になっているCADデータに情報を付加して、現場では今まで通り紙を利用するという運用であれば問題ないと考えます。

ただ、図面というものは、作成する側(お客様や設計部門)と活用する側(製造部門)と組織が分かれているケースが多いです。そこで情報連携がうまくいくようにデータ活用する仕組みを考えることがDX実現の近道かもしれません。

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