現在、2次元CADの市場ではAutoCADがデファクトスタンダードとなっています。AutoCADのこれまでの経緯と、今後も継続利用して行く上での注意点や、さらに業務改善に役立つ図面管理システムとの連携メリットをご紹介します。
もくじ
CADとは?歴史も解説
CAD(Computer aided design)は、コンピュータ支援設計と訳すこともでき、コンピュータを利用して設計する支援ツールのことです。CADを利用するメリットは、流用設計にあります。CADには、設計作業を少しでも効率良くできるよう色々な機能が搭載されています。
CADに触れたことがある方であればご存知だと思いますが、CAD画面は複雑で、上下左右の周り全体に、さまざまなコマンドが配置されています。初めてCADに触れる方は、何から始めたらいいのか戸惑う方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか?
CADは、昔、IBM社がCADAMという製品を発売し、造船設計で使われ始め広がっていきました。当時はPCスペックも低いことから、ホストと端末を利用した大規模なシステムで、1台数千万円もするほど高額でした。
その後、EWS(Engineering WorkStation)上で動くHP社製のME10や、AutoCADが順次リリースされ、パソコンベースになると、富士通のiCAD、日立GMM、IBMからはMicro CADAMなどリリースされ、大手企業から中小企業へ少しずつ浸透していきます。
当時は2次元CADが主流でした。しかし、EWS、MS-DOSの時代からAutoCADは3次元まで描くことができる製品をリリースしていました。
CADを利用するメリット
CADは、設計作業において、業務効率化対策として導入が進んできました。ここでCADを利用するメリットを整理してみましょう。
- 図形を繰り返しコピーで作れるので効率的に作図ができ、類似図面の作成が容易にできる
- コンピュータが持つデータから寸法を記入するため、単純な寸法の入力ミスがなくなる
- 設計途中の寸法や面積の測定により、手計算の手間が省ける
- 設計したデータはプリンタや複合機、大判機に出力するため、細部まで正確な描画が可能
CADを利用すると業務効率化につながることと、パソコンの進化によりCADは利用範囲が広がっていきました。例えば、機械系CADから建築用CAD、建築設備用CAD、土木用CAD、電気回路用CAD、電気基板用CADなどとどんどん広がっていきました。
AutoCADは2DCADのデファクトスタンダード
CADの初期段階からAutoCADがリリースされていますが、AutoCADには他のCADと異なる点として、初期リリースから以下の機能を標準で搭載していました。
- データフォーマットのDWGは非公開ですが、中間フォーマットとしてDXFファイルのフォーマットを公開している
- カスタマイズするためのAPIを標準搭載している
- 画面設定、フォントなどを自由に変更でき、多言語に対応していた
このAPIにより、AutoCADは機械系CADだけでなく、建築設計用、電気設計用CADとして利用範囲を広げていきます。
さらに他のCADと異なる点が、CAD空間の考え方です。紙上に縮尺の物差しを使って描く、当時ドラフタ上に手書きで設計している描き方を大半のCADはコンピュータ上で実現する手法をとっていました。
このような手法と異なり、AutoCADはコンピュータ上の仮想的な空間(モデル空間)上に実際の製品を実寸大で描画します。その上で、印刷する際に用紙サイズに入るよう縮小して印刷するという考え方です。寸法や文字は、縮小印刷して紙上で見やすいサイズで記入します。
現在、主流になりつつある3次元設計の基本的な考え方や仕様を、 AutoCADは発売当時から今も変わらず守り続けているのです。
さらに、パソコンのOSがMS-DOSからWindowsへ変わった時代(Windows95、Windows XPなど)に、AutoCADは、マイクロソフト社が提唱するオブジェクト指向を取り入れ、CADを一新させます。世の中がWindowsにより1人1台の時代にうまくマイクロソフト社とタッグを組んだことで、デファクトスタンダードに駆け上ります。
現在、世の中の設計も3次元設計へ移行しつつあります。従って、最大のシェアを持っていたAutoCADが2次元CADとしてのデファクトスタンダードをキープしています。
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AutoCADを利用する上で注意する点
AutoCADは古くからリリースされているCADです。旧バージョンを後継 CADで読み取りできるよう、ファイルの上位互換を守っています。AutoCADのCADファイルはDWGという拡張子ですが、その内部ではバージョンをもっています。そして、一度新しいDWGファイルで保管すると、旧バージョンのCADで開くことはできなくなります。
従って、過去作成したDWGファイルと現在運用している DWGファイルのバージョンが異なるケースがあります。つまり、どのバージョンで運用するのか、旧バージョンから現在利用しているAutoCADで読み込んだ際に何か問題が発生しないのか、常に意識して運用していく必要があります。
AutoCADのDWGファイルは以下のようなバージョン情報を持っています。このバージョンは、DWGファイルをメモ帳で開くことで、ファイルの先頭に記述されておりバージョンを確認することが可能です。
AutoCAD DWGバージョン一覧
- 2018/LT2018(AC1032)
AutoCAD 2018 / 2019 / 2020 / 2021 / 2022 / 2023 - 2013/LT2013(AC1027)
AutoCAD 2013 / 2014 / 2015 / 2016 / 2017 - 2010/LT2010(AC1024)
AutoCAD 2010 / 2011 / 2012 - 2007/LT2007(AC1021)
AutoCAD 2007 / 2008 / 2009 - 2004/LT2004(AC1018)
AutoCAD 2004 / 2005 / 2006 - 2000/LT2000(AC1015)
AutoCAD 2000 / 2000i / 2002 - R14/LT98/LT97(AC1014)
AutoCAD Release 14 (14J) / LT98 / LT97 - R13/LT95(AC1012)
AutoCAD Release 13 (13J) / LT95 - R11/R12(AC1009)
AutoCAD Release 11 (GX-5) / Release 12 (12J) - R10(AC1006)
AutoCAD Release 10 (GX-III) - R2.6(AC1003)
AutoCAD Version 2.6 (EX-II) - R2.5(AC1002)
AutoCAD Version 2.5 (ADE-3EX) - R2.1
AutoCAD Version 2.1 (ADE-3) - R2.05
AutoCAD Version 2.0 (2)
AutoCADをさらに活用する図面管理
CADは、過去図面の資産をいかに活用するかが最大のメリットです。しかし、CADは図面の内容が絵であるという特性から、文字による検索ができません。ここでCADファイルを活用することに一役買うのが図面管理システムです。
絵で探せない情報を、図面枠に記入されている図面番号や図面名称や、作成者、作成日付、品番などさまざまな情報を属性情報として合わせて管理することで検索性が大きく向上します。
また、図面は絵ですが図面管理システムにはビューア機能を搭載している製品が多くあります。ビューアによって、紙をめくるイメージで素早く操作ができ、サムネイル表示により一度に大量の図面を閲覧し、目的の図面を探すことが可能です。
そして、図面の管理で重要なのは、版管理機能です。図面は製品設計の中で何度も内容が改訂されます。生産側では、常に最新版の情報を管理しておく必要があり、場合によっては旧版で製品設計してしまうケースもあります。
版管理を間違うと、間違った製品を製造してしまい不良在庫の要因となりかねないため、図面管理システムの版管理機能がお役に立つ最大のメリットの一つです。版管理について詳しい内容は下記記事をご覧ください。
文書管理の最新版管理について解説 https://d-quick.i-site.co.jp/2022/03/14/latest-version/
まとめ
現在、2次元CADのデファクトスタンダードと言われるのがAutoCADです。しかし、スタンダードが故に、互換性があり、安価なCADソフトが多数リリースされています。製品によっては、APIまでほぼ問題なく動作する互換CADも出てきていますが、本業の製造に影響がないかを常に確認しながらご利用ください。
なお、世の中は3次元設計に切り替わってきつつあります。しかし、過去の2次元CADの資産だけでモノづくりや製造に問題ない場合は、まだ2次元CADがメインのお客様も多数います。2次元CADは、まだまだ無くなりはしない市場だと思います。
弊社は、2次元設計、3次元設計に関わるお客さまへこれからも業務改善を提案し続けてまいります。設計に関わる業務改善など、相談事がありましたら何なりとお気軽にお声がけください。
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