文書管理ソフトは国内外で数多くの製品が販売されています。自社で選定する時にどの製品が自社に合っているのか、費用対効果がしっかり出せるのかなど、製品選定で苦労されている方も多いのではないでしょうか。文書管理ソフトは管理する対象文書の種類によって要求される機能が異なります。本記事では文書管理ソフトとは?を考察しながら、一般企業で作成される文書の種類ごとに、どの様な機能が求められるかをご紹介します。
もくじ
文書管理ソフト:一般文書で求められる機能
一般文書は、起案文書とその他の文書に分けられます。
まず、決裁書のように、事案の中で決裁権限を有する者に説明・許可・決定・承認等の意思決定を受けるために作成する起案文書ではどうでしょうか。
起案文書の管理で要求される機能としては、ワークフローが挙げられます。
最近ではテレワークの普及に伴い、河野太郎行政改革担当大臣が各省庁に押印を原則廃止するよう求めたことにより、経済産業省を始め各省庁で 2021年度より大半の手続きで押印を廃止する方針が発表されました。一般企業でも「脱ハンコ」の流れが加速してきています。起案文書は決裁権限の意思決定を記録する必要があり、ワークフローの導入を検討されている企業も増えてきています。
次に、部門内、または部門間で作成される指示書や報告書などの文書ではどうでしょうか。
文書テンプレートを利用して文書を作成したり、過去に作成した文書の内容を流用したりできるケースも多く、流用率をあげる事で業務の効率化に繋がります。
このような文書で必要な機能としては以下が挙げられます。
・文書番号の採番機能
・属性管理(文書名、文書種類、作成者、作成日など)
・検索機能(属性検索、全文検索)
・通知機能
アプリケーションで作成された文書ファイルは、全文検索機能を利用する事が可能です。しかし、FAXや紙で入手した文書をスキャナーで取込み、電子化したファイルはイメージファイルのため文書内に文字情報がなく、文字で検索できるのはファイル名だけになります。検索性を向上させる方法として属性情報を付与したり、OCR処理したテキスト文字を活用して全文検索できるようにしたりと、如何に過去情報を活用できるか、各社工夫しています。
文書管理ソフト:技術文書で求められる機能
技術文書とは、図面や部品表(BOM)、仕様書などの文書です。
技術文書は、図面をベースに複数の文書が関連しあっており、新規作成して利用するだけでなく、流用や改訂が頻繁に発生します。1つの版管理の失敗で製造ミスが発生し大損害を引き起こす可能性もあり、文書番号管理(図面番号管理・品番管理・版管理)はどの企業も重要視する機能です。
技術文書は主に企画・設計部門で作成された後、DR(デザインレビュー)、検図、承認を行い完成します。この一連の承認行為も内容により承認メンバーも可変し、複数部門にまたがる場合も多く、ワークフロー機能を利用する場合、一般文書と異なり柔軟なルート定義ができる必要があります。
承認後は数多くの部門(生産技術・製造・調達・品質管理・営業など)へ文書が配布されます。改訂版が発生すると差し替え・旧版の返却などが行われるため、最新版管理も製造ミスを起こさないための重要な業務となります。
この配布業務は、関係者の作業時間を多く必要とすることもあり、近年では電子配布による自動化に取り組む企業も増えてきております。
文書管理ソフト:法的に保管義務のある文書で求められる機能
財務・税務関係の帳票類や取締役会議事録など、商法や税法で保管が義務づけられている文書の保管はしっかりと行う必要があります。
このような文書は今までは基本的に紙やマイクロフィルムで保存していました。
近年では重要文書以外は「e-文書法」により電子化された文書ファイルでの保存が認められるようになってきましたが、電子保管運用するには、以下の4つの要件を満たす必要があります。
1)見読性
データをパソコンやディスプレイなどを用いて明瞭な状態で見られること
2)完全性
電子化文書が事故や操作ミスで滅失することを防ぎ、改ざんや消去があった場合に直ちに事実を確認できること
3)機密性
許可されていない人によるアクセス防止の措置を講じること
4)検索性
電子化文書を有効的に利用するために、必要なデータをすぐに引き出せること
上記の要件を満たすために文書管理ソフトを利用する企業も増えてきていますが、利用しなくても運用は可能です。ただし、2)の要件だけはタイムスタンプの機能が必須です。
「e-文書法」のルールに則って運用するには、上記4つの要件を満たすだけでは不十分です。社内規定の見直しや管理帳票のルール化を行い、税務署へ届け出て3ヶ月のみなし承認を経てから運用可能となります。
文書管理ソフト:システム連携で付加価値が上がる
企業内の基幹となる情報はシステムで管理している企業が大半になります。
販売管理、生産管理など、業種・業態により基幹システムは変わってきますが、企業情報のうち基幹システム内に存在する情報は20%程度と言われており、残り80%の情報は文書の形で運用・管理されています。
この80%に相当する文書は、お客様との契約に関わる文書や、取引関係の文書(見積・注文書・請書・納品書など)、製品に関わる文書、品質に関わる文書など多岐に渡ります。企業ではこのような文書を連携するキーとなる番号で情報連携を実現しています。(受注・発注番号、工事番号など)
基幹システムと文書の情報を連携できれば企業内の情報を有効活用でき業務改善にもつながります。文書管理ソフトに登録されたファイル内の情報を基幹システムへ引き渡すことで、これまでの手入力作業を自動化できます。また今まで時間をかけて探していた文書が、基幹システムから1クリックで表示できれば業務効率を格段にあげることができます。
まとめ
文書管理ソフトに求められる機能とは?と題しましてご説明してまいりました。社内で作成された文書は、ファイルサーバを利用すればフォルダ分類での情報共有を安価に実現することが可能です。ただWindows95がリリースされ、PCを1人1台利用するようになって25年も経過すると、過去の文書ファイルも大量に存在し、フォルダで分類するだけでは目的の文書が探せない状況になってきています。また情報漏洩の観点からセキュリティ意識は高まる一方で、誰でもコピー・印刷ができるファイルサーバ運用には限界がきています。文書管理ソフトを利用すれば、大量の文書の中から必要な文書を高速に検索ができるだけでなく、安全な情報共有環境を実現できます。何の文書をどう管理するのか、目的を明確化し、目的にあった文書管理ソフトをご検討されることが費用対効果を最も高める事に繋がります。是非ご検討してみてください。
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