感染症対策や働き方改革により再び注目されることとなったペーパーレス化。かねてから紙の問題に頭を悩ませていたところに、テレワークの導入が始まり納得のいくペーパーレス化が実施できなかった企業も多いのではないでしょうか。今回は、ペーパーレス化の成功事例から、ポイントとその効果についてご紹介していきます。
ペーパーレス化の事例
はじめに、過去にペーパーレス化に取り組んだ企業の事例をご紹介します。
【ペーパーレス化前の課題】
・紙の保管場所がなく、印刷コストもばかにならない
・テレワークをしたくても紙での業務のため、出社する必要があった
・書庫が整理されておらず過去の資料を探すのに時間がかかっていた
【ペーパーレス化後の効果】
・電子データをクラウドで管理でき、毎月の印刷コストも大幅に削減できた
・ワークフローシステムの導入により自宅や出張先での業務が可能になった
・ドキュメント管理システムにより検索効率が飛躍的に向上した
ペーパーレス化の目的を考える
ペーパーレス化を進めていくには、まず目的を明確にしていくことが重要です。ペーパーレス化に成功した企業は、社内の業務を可視化し、課題の洗い出しを行い、その課題から優先順位をつけ、目的を設定しています。目的を明確にすれば、達成するために必要な手法やコストを算出しやすくなるのです。
【紙運用による業務課題から目的を明確にしていく】
「課題例」
保管場所の問題、紙の保存状態(劣化問題)、印刷コスト、紛失、盗難、BCP対策
申請・決裁業務、テレワーク導入、定例会議、ミーティング
「目的例」
・印刷、保管、場所などのコスト削減
社内文書は原則データ配布とする
電子化文書は、クラウド上で管理
重要度の低い紙文書は期限を決めて廃棄
・業務効率の向上
ドキュメント管理システムにより一元管理
全文検索や属性検索により検索効率を向上
履歴管理やステータス管理により業務ミスを低減
・社内セキュリティの向上
アクセス権設定により不用意な持ち出しや印刷を管理
アクセスログによる漏えいリスク抑止
目的からペーパーレス化の範囲を考える
目的を明確にしたあとは、ペーパーレス化の範囲を考えていきます。社内の紙資料を一気に電子化しようとしてもハードルが高く、失敗・トラブルが多くなります。「社内で電子化を実施したらスケジュール通りに作業が終わらない」、「電子化業務を委託してコストが想定以上にかかってしまった」、という声は数多くお聞きします。
また、紙での業務に慣れ親しんだ社員も多く、急な改革は社内の反発を招きかねません。そこで有効となるのが文書の棚卸しです。
【文書の棚卸しのポイント】
棚卸しとは、ある時点での会社の消耗品数や商品在庫数を確認し、資産価値を評価していくことです。その棚卸しを社内の紙文書に対して実施します。ただし、数量だけを把握していくだけでなく、電子化対象となる評価基準を定めて仕分け処理を行うことが重要です。
<電子化対象となる評価基準例>
対象文書の必要性(重要度)低い →期間を定めて廃棄 or 書庫で保管
対象文書の必要性(重要度)高い →検索頻度で評価
対象文書の検索頻度低い →書庫で保管
対象文書の検索頻度高い →保存状態の把握、数量の確認
検索頻度の高い紙文書の保存状態や数量を把握し、スケジュール内に電子化を実施できる範囲で段階的に取り組んで行きましょう。
【電子化のポイント】
電子化対象となる数量が把握できたら次は電子化に必要な要件を考えていきます。スキャニング要件とは別に、電子化されたデータをどのように管理・検索するかを想定しながら要件を決めていく必要があります。次で記載してるシステムの選定にも関わってきますので並行して考えていくのが良いでしょう。
<電子化に必要な要件>
保管体系 フォルダ階層 or データベース階層で管理するか
検索性 ファイル名以外での検索方法が必要か(全文検索、属性検索)
視認性 利用端末は何になるか(タブレット端末、モバイル端末からアクセスはあるか)
ペーパーレス化に必要なシステムを考える
ペーパーレス化の範囲が定まってきたら、次は電子データの運用・業務について必要なシステムを考えていきましょう。まずペーパーレス化の目的にそって必要なシステムを検討します。社内の既存システムが利用できる場合もありますので、情報システム部門に確認してみましょう。
【目的別ペーパーレス化に有効なシステム】
業種によっては様々なシステムがありますが一例としてご紹介します。
会議、ミーティング、報告 ・・・・・WEB会議システム、コミュニケーションツール
財務関係 ・・・・・会計管理システム
経費精算、稟議、その他申請 ・・・・・ワークフローシステム
仕入、発注業務 ・・・・・EDI
点検、検査、日報 ・・・・・電子帳票システム
電子契約 ・・・・・電子契約システム、タイムスタンプ
製造・生産・工程 ・・・・・生産管理システム
社内共有、管理 ・・・・・ドキュメント管理システム(文書管理システム)
スケジューラー、設備予約 ・・・・・グループウェア
使用するシステムによっては、PDF形式でないと保管できなかったり、A3サイズまでしか閲覧できなかったり、カラー非対応など制限がでてくる場合もあります。さらに、全文検索や属性検索を行う場合は、OCR処理で文字情報を抽出する必要もでてきます。電子化要件とシステム選定は合わせて考えていくと良いですが、システム選定には対応範囲が広いものや拡張性が高いものをお選びください。
また、システムによっては、その業務に必要な電子データの保存・管理はできても、その他の電子データの管理には適していないものもあります。その場合、その他の電子データはファイルサーバーで保存することになります。
そこで、文書管理や図面管理の機能を搭載したドキュメント管理システムが有効になります。業務で必要な各システムとドキュメント管理システムを連携させることにより、社内の電子データを一括して管理できます。さらにファイルサーバーにはない、検索機能や履歴管理機能、アクセス・ステータス管理によりセキュアな環境下で社内データを一元管理することができるのです。
まとめ
「ペーパーレス化 成功事例から読み解くポイントとその効果とは」と題しまして、今回はペーパーレス化についてお話してきました。注意すべきポイントは以下の3つです。
【ペーパーレス化の成功ポイント】
・ペーパーレス化後の運用まで見据えて目的を明確にする
・文書の棚卸しを実施し必要なスケジュール・コスト・システムを把握する
・社内の反応やITリテラシーを確かめながら段階的に実施する
急いでペーパーレス化を推し進めていくと失敗しやすいので、現場の声や状況を確認した上で段階的にすすめていきましょう。
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